熊本城模型

先の熊本地震で被災した熊本城の建造物の中から、宇土櫓・飯田丸五階櫓・天守を模型にしたものです。熊本復興祈念展「熊本城と加藤清正・細川家ゆかりの品々」の開催に合わせて、日本橋高島屋の依頼により製作致しました。展覧会閉幕後、日本橋高島屋より熊本市へ寄贈されました。宇土櫓模型(1/100)と飯田丸五階櫓模型(1/100)は熊本城総合事務所より図面の提供を受け、精巧に再現しています。ここではその製作過程をご紹介し、完成画像を公開いたしております。

100分の1宇土櫓模型・飯田丸五階櫓模型

①設計~建物軸組

●図面をパソコンに取り込み、建物の軸組を設計しました。

●その後、設計に従ってMDF材をレーザーカットし、建物の芯を作成しました。

②外壁の製作

●図面を100分の1の模型の原寸に拡大し、外壁の下見板を作成、軸組に貼り付けていきます。下見板を押さえる「押縁」や鉄砲や弓を射る小窓の「狭間」、石落しをはじめ、実物通りに作り込みました。軒裏の垂木や、垂木を受ける「出し桁」も再現しています。

●宇土櫓の続櫓など、建物の傾きや歪みも正確に再現しています。

③屋根の製作

●図面から型紙をつくり、屋根を張っていきます。

●瓦は半円のプラスチック材を一本一本貼り付けて表現しています。丸瓦の総延長は、宇土櫓と飯田丸五階櫓を合わせて50mをゆうに超えました。

●軒瓦や鬼瓦はは金属パーツで再現しました(軒瓦・鬼瓦設計:石屋模型店 安藤幸太郎氏)。目を近づけないとよく見えませんが全てに実物と同じように紋が入っており、特に宇土櫓は加藤家の桔梗紋、細川家の九曜紋、火除けの巴紋の三種類を使い分け、さまざまに形の異なる鬼瓦も再現しました。

④彩色

●組み上がった建物に彩色します。木や瓦、漆喰それぞれの色合いと質感を再現すべく、何層にもわたる重ね塗りを施します。現存遺構で国の重要文化財の宇土櫓と、近年の復元建物である飯田丸五階櫓は下塗りの色から変え、それぞれの建物の持つ色彩感を表現しています。

●通常の建築模型ではあまり表現することのない、退色やくすみなどの汚れも大切に描き込み、臨場感ある模型へ仕上げていきます。

⑤石垣の製作

●熊本城が誇る石垣は、石を一つひとつ彫り込んで造形します。特に、飯田丸五階櫓直下の石垣は、図面の提供により、石垣の反りの角度や石積み一つ一つに至るまで実物に正確です。

●熊本城の石垣独特の黒っぽい色合いなど、丁寧な彩色で再現しました。

⑥ジオラマの作成

●周辺の地面や草地を整え、植え込みや樹木、柵等を設置します。

●被災前の様々な写真や資料から、樹木や植え込み、石垣の変色に至るまで、可能な限り再現しました。

1/150天守ジオラマ

①天守の製作

●このジオラマの天守は市販の木製キット(ウッディージョー社製)を使用しています。しかしながらキットそのままではなく、細部の造形に手を加え、最上階はオリジナルのパーツを使用するなど、本物の天守の雰囲気を再現することにこだわりました。宇土櫓や飯田丸五階櫓とはまた違う、コンクリート再建天守独特の色合いにも気を使っています。

②ジオラマの作成

●天守周辺の石垣を自作します。小天守下の複雑な階段やその最下部にある抜け穴「石門」を製作しました。

●資料やさまざまな写真をもとに立体化しました。

●航空写真などをもとに地面を整え、樹木を設置、1/150のフィギュアを配置しました。

完成写真集

以下に掲載する写真は全て模型です。

1/100宇土櫓模型

熊本城 宇土櫓 模型

宇土櫓模型写真集(クリックで拡大)

1/100飯田丸五階櫓模型

飯田丸五階櫓模型写真集(クリックで拡大)

1/150天守ジオラマ

天守ジオラマ写真集(クリックで拡大)

展示状況

熊本復興祈念展「熊本城と加藤清正・細川家ゆかりの品々」の開催に合わせて、2017年4月12日より24日まで、日本橋高島屋正面玄関ホールに展示されました。

模型情報

◆宇土櫓模型(1/100)

◆飯田丸五階櫓模型(1/100)

【製作】島 充
(城郭模型製作工房)

【図面提供】熊本城総合事務所

【軒瓦・鬼瓦設計】:安藤幸太郎
(石屋模型店)

◆天守ジオラマ(1/150)

【製作】:島 充
(城郭模型製作工房)

【エッチングパーツ】安藤幸太郎
(石屋模型店)

製作者紹介






島 充


1982年生まれ 福岡県在住 城郭・古建築模型作家
慶應義塾大学文学部美学美術史学専攻卒業
日本の伝統建築空間に魅せられ、現在は日本の城郭および古建築模型を専門に製作する作家として活動している。現地調査や資料考証に基づいた臨場感ある作風には定評が高い。模型専門誌への掲載作品のほか、個人の観賞用作品から展示作品まで幅広い製作を展開している。